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[研究目的]

 

精神遅滞、自閉症、広汎性発達障害、学習障害などの発達障害児に対し、早期に診断して、療育を行うことは、児の発達、社会参加を促進するために重要であり、地域社会においても乳幼児健診が行われるなど、早期診断が試みられている。また、発達障害児の診断、発症予防および医学的、社会的対応には、その病態解明が重要であるが、十分な解明はなされていない。発達障害の病因として、妊娠、周産期、あるいは出生後における感染、外傷などの障害は重要であるが、何らかの遺伝子異常に起因するものも多いと推定される。
発達障害は、人口の2−3%存在する。我々の、以前の乳幼児健診における発達障害児の検討では、糟神遅滞は男児が女児の3倍と多く、家族性糟神遅滞は16%、その中で母と男児あるいは男児同胞に糟神遅滞がみられX連鎖性と推定されるものが60%と高頻度であった。従って、X連鎖性精神遅滞の遺伝子異常の解明は、発達障害の病態解明に重要である。
精神遅滞を来す遺伝子異常として、変性疾患や奇形症候群などにおける遺伝子異常が徐々に解明されてきているが、精神遅滞の遺伝子異常として明らかになったものは、家族性の精神遅滞を来す疾患である脆弱X症候群の遺伝子異常のみであり、その他のほとんどのX連鎖性精神遅滞の遺伝子異常は不明である。家族性精神遅滞のなかで、脆弱X症候群患者を検出し、日本での発症頻度を明らかにすることは、脆弱X症候群の病態解明に重要であると共に、脆弱X症候群以外の遺伝子異常を有する家系を検出できることになり、今後の精神遅滞の病因遺伝子解明に役立つと考えられる。
脆弱X症候群は、欧米では、男児1000−1500人に1人と頻度が高いといわれているが1)、日本では、多いとする報告と少ないという報告があり、その発症

 

 

 

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